DAAJ通信  News Letter  ―会員情報誌―

                                                                  発行者 日本DNAアドバイザー協会(発行No.1-20260525)


<はじめに>

日本DNAアドバイザー協会(DAAJ)会員の皆様、こんにちは!

直木賞作家、河﨑秋子氏の「清浄島」を読了しました。礼文島の風土病「エキノコックス症」との闘い、調査・研究員と島民の苦悩を描いた力作で、今年の4月に文庫本(双葉文庫)になったばかりです。エキノコックス症は、主にキツネと野ネズミの間で伝播する人獣共通感染症で、約90年の間、未だ撲滅には至らず、北海道を中心に毎年10〜30名程度の感染者が報告されています。

礼文島で思い出したのが、かつて国立科学博物館に展示されていた、縄文人のリアルな復顔像です。これは、礼文島の船泊遺跡から出土した女性の人骨の全ゲノム解読がもたらした画期的な研究成果で、AIを活用したDNA表現型分析技術の飛躍的進歩により、驚くほどリアルに生前の姿の復元に成功しています。まさに世界が注目するトピックであり、ノーベル生理学・医学賞の受賞者、ペーボ博士がサイエンス誌(2010年)に発表したネアンデルタール人のゲノム情報とも比較されますが、同じ骨でも劣化の程度に大きな違いがみられるようです。これは、ネアンデルタール人の骨が、長い歳月でDNAがずたずたに切れていたのに対し、礼文島のものはきわめて保存状態がよく、現代人と同等のクオリティを保っているという点です。時の長さだけではない特有の気候や土壌という環境要因も重なり、それ自体が奇跡とも言える驚くべきことです。

話しは変わって、つい先日、お世話になっている知人の紹介で、日本に一台しかないハンブルグ・スタインウェイで奏でる贅沢なピアノ演奏を聴かせていただきました。天然の象牙鍵盤を使用したハンブルグ製は希少価値が高く、音の深みと温もりは、まさに唯一無二、珠玉のひとときとなりました。前段と関連しますが、大昔から現代に限らず象牙のDNAを解析すれば、世界中のどの地域に生息していたゾウのものか性別も含めて特定が可能であり、美術品や工芸品のように歴史のミステリーを解き明かすロマンに満ちた壮大なストーリーがみえてくるかもしれません。ゲノム解析と医療の進歩は日々の大きな関心事ですが、科学と歴史と芸術は切っても切れない関係にあることもゲノム情報からあらためて認識させられます。

(H.T.)

<ご報告:DAAJセミナーの記事が日本バイオ技術教育学会誌に掲載されました>・・・

昨年12月に開催いたしました「第16回遺伝子検査活用セミナー」の報告記事が、本セミナーにご協賛いただいた日本バイオ技術教育学会(JABE)の学会誌「バイオテクノロジスト」に掲載されましたのでご報告いたします。(下図)。

■日本バイオ技術教育学会について

日本バイオ技術教育学会<https://bio-edu.or.jp/>は、1993年に設立された、全国の大学・専門学校など53校の正会員を擁するバイオ教育の専門学会です。

バイオ技術者認定試験(初級*・中級・上級)の実施や教科書の出版、学術総会の開催などを通じ、専門家の養成および市民のバイオテクノロジーへの理解を深める活動を精力的に展開されています。

*初級バイオ技術者認定試験について: 「バイオリテラシー」の評価を目的としており、学生のみならず、実務者やバイオに関心を持つ社会人まで幅広く対象としています。

今回のセミナーの様子は、共催先である専門学校東京テクニカルカレッジ(TTC)のウェブサイトでも紹介されています。あわせてご覧ください。<https://tec.ttc.ac.jp/blogs/854/>

本年12月にも第17回遺伝子検査活用セミナーを開催いたします。奮ってご参加ください。

(M.O.)

<産業界からみた遺伝子・ゲノムをめぐる「制度と実用化」>

今回は産業界の視点から、この一年の遺伝子・ゲノムをめぐる「制度と実用化」の動きをお伝えします。結論から申し上げると、2025年からの約一年間は、遺伝子検査ビジネスやゲノム医療にとって、ルールと体制が大きく動いた節目の時期でした。DNAアドバイザーとして活動される皆様の足元に直結する話題ですので、要点を整理します。

1. DTC(消費者向け)遺伝子検査の「線引き」がより明確に整理されました

2025年3月28日、経済産業省と厚生労働省が「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」を改定しました。近年拡大する民間サービスにおいて、利用者の誤認を防ぐ観点から、従来の考え方がより具体的に整理されたものです。

  • 医師でない民間事業者の提供するサービスについては、従来からの「診断」に加え、「疾患の罹患可能性の提示」が個別の医学的判断と受け取られ得る場合には、医業に該当する可能性がある領域として整理されました。
  • 検査結果の通知や情報提供は「医学的・科学的根拠に基づいた客観的な内容」であることが、改めて強調されています。

つまり、「この遺伝子があるから将来この病気になります」といった、個別の診断やリスク評価と受け取られかねない踏み込んだ表現は、民間サービスにおいては慎重な対応が求められる領域であることが、より明確になったと言えます。会員の皆様が生活者へ情報提供やカウンセリングを行う際の、重要な指針となります。

2. 国の「ゲノム医療基本計画」が初めて閣議決定されました

2025年11月21日、政府はゲノム医療法(令和5年成立)に基づく初めての「ゲノム医療施策に関する基本的な計画」を閣議決定しました。概ね5年程度を見据えた中期的な方針として、次の三本柱が掲げられています。

  • 国民の適切な理解と啓発(ゲノム情報による不当な差別の防止、相談窓口の整備を含む)
  • 医療等の提供体制の構築(相談支援体制の整備、専門人材の確保)
  • 研究開発の推進(大規模バイオバンクの整備など)

とりわけ「差別の防止」はゲノム医療法の理念的中核でもあり、「適切な理解と啓発」「相談支援」と並んで前面に位置づけられたことは、遺伝リテラシーの重要性が一層高まっていることを示しています。DNAアドバイザーの役割も、その中で改めて問われていくことになります。

3. 検査とデータの「質」は国際標準で評価される時代へ

産業界やアカデミアの視点で見逃せないのが、試料やデータの「質保証」が国際的な枠組みで評価される動きです。

  • バイオバンクの一般要求事項を定めた国際規格「ISO 20387:2018」を基に、日本適合性認定協会(JAB)による国内バイオバンクの認定が徐々に拡大しています。これらは必須要件というより、国際的な信頼性を確保するための重要な枠組みです。
  • 収集された試料やデータがこうした国際標準に適合しているかどうかは、国際共同研究への参加や、創薬・産業利用における信頼性評価に影響を与える可能性があります。

「信頼できる検査・データとは何か」が、グローバルな基準で問われる段階に入っています。

4. 医療・産業への実装は着実に進展しています

制度や標準の整備と並行して、社会実装も進んでいます。がん遺伝子パネル検査は2019年6月の保険適用以来普及を続け、2025年3月末時点で、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)への保険診療での登録患者数が10万例を突破しました。

さらに2026年3月30日には、がんや難病の全ゲノム解析等の成果を患者へ還元しつつ、データ利活用を連携・統合的に推進するための国家的な事業実施組織「日本ゲノム医療推進機構(GeMJ)」が設立され、国立がん研究センター内に拠点を置いて始動しました。

―制度が整い、標準が定まり、社会実装が広がる。この三つが噛み合い始めた一年でした。だからこそ、最先端の検査結果やゲノム情報と一般の生活者とを、正しいリテラシーでつなぐDNAアドバイザーの役割は、今後ますます重要性を増していくと考えられます。

今後も四半期ごとに、こうした産業・技術の最新テーマを会員の皆様にお届けしてまいります。「この話題をさらに深掘りしてほしい」といったご要望がございましたら、ぜひお寄せください。

【出典】

  • 経済産業省・厚生労働省「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」(平成26年3月31日制定、令和7年3月28日改定)
  • 厚生労働省「ゲノム医療施策に関する基本的な計画」(令和7年11月21日閣議決定)
  • ISO 20387:2018「General requirements for biobanking」、およびAMEDバイオバンク連絡会資料
  • 国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター(C-CAT)「保険診療でのがん遺伝子パネル検査の登録患者数が10万例に到達」(2025年5月8日発表資料)
  • 厚生労働省「日本ゲノム医療推進機構(GeMJ)」発足関連資料(令和8年3月30日設立、国立がん研究センター内)

(T.T.)

<日本を取り巻く環境と技術的話題>

昨今の話題は、なんといっても世界の覇権情勢でしょうか?日本を取り巻く環境も刻々と変化しています。前世紀後半から世界をリードしてきた米国の衰退が目立つようになってきました。これまで米国の振舞いに我慢してきた中国が一気に巻き返しを図ったのが、5月の米中および、中ロ首脳会談でしょうか?このまま米国は衰退し、中国の時代となっていくのか、あるいは、この1世紀で蓄えた底力を発揮して、持ち直すのか、日本は地政学的にも大きく左右される位置にあり予断を許せない状況がしばらく続きそうです。

卑近な話題は、アンソロピック社の人工知能クロード・ミュトスでしょう。これはシステムの脆弱性を検知する能力がものすごく高く、悪用されたらサイバー攻撃で既存のコンピュータシステムが簡単に破壊されるので、米政府は安全保障上の観点から公開範囲拡大に難色を示しているようです。アンソロピックは、オープンAIにいた複数の人物が、同社のやり方に異を唱え、2021年に立ち上げた生成AIサービスを手がける新興企業ですが、時価評価額は141兆円ですでにオープンAIを超えたようです。

戦争は科学技術の発展を加速するといわれますが、最近の戦争では、ドローンやステルス無人機による攻撃が多用され、また迎撃の精度も向上し、一昔前とはその形状が大きく変わってきました。大国が引き起こした戦争が、大国の勝利で終わるとも限らない点もまた見逃せないところでしょう。

さて、認知症検査もどんどん進化しています。今年12月にDAAJセミナー(12月17日開催)で講演予定の(株)セグノス、大西徳幸社長の技術は、アミロイドβ断片を血液一滴で高感度に測定できる画期的な技術です。詳細は当日の発表に期待したいと思います。それではまた皆様にお会いできることを楽しみにしております。

(R.K.)


第17回『 遺伝子検査活用セミナー』参加者募集中

<同時にDNAアドバイザー認定資格受験者も募集しています>

開催日時:2026年12月17日(木)

場所:東京テクニカルカレッジ(TTC)

     (形式:有料のリアルセミナーで、オンデマンド配信も実施いたします)

<昨年の実施イメージ>

       セミナー内容の詳細は確定次第にご案内いたします。   

     <DNAアドバイザー認定資格に関する詳細は以下をクリックしてください>

活動趣旨

当協会は、DNA検査の意味を誰もが十分に理解し、正しく活用することにより、自分自身や家族のライフスタイルの実現を適切に支援します。さらには、健康増進のためのよりよいフォロー体制の実現を目指して、以下の活動を行っています。

  • DNA検査を理解するための啓発活動
  • DNA検査に関する最近の研究動向と情報の配信
  • 会員相互の交流活動の支援
  • 国内外のDNA検査に関連する団体との連携事業

なお、医療機関を介して提供されるDNA 検査に限らず、最近わが国でも欧米並みに普及してきた消費者が直接実施するDNA 検査(DTC遺伝子検査)による個人の健康増進を目的とした情報サービス も考慮したアドバイザーの育成を目指します。当協会で対象とするDNA 検査は以下に示す通りです。


        

協会概要

当協会は、DNA検査の意味を誰もが十分に理解し、正しく活用することにより、自分自身や家族のライフスタイルの実現を適切に支援します。さらには、健康増進のためのよりよいフォロー体制の実現を目指して、以下の活動を行っています。

  • DNA検査を理解するための啓発活動
  • DNA検査に関する最近の研究動向と情報の配信
  • 会員相互の交流活動の支援
  • 国内外のDNA検査に関連する団体との連携事業

なお、医療機関を介して提供されるDNA 検査に限らず、最近わが国でも欧米並みに普及してきた消費者が直接実施するDNA 検査(DTC遺伝子検査)による個人の健康増進を目的とした情報サービス も考慮したアドバイザーの育成を目指します。



 

入会のご案内

ライフスタイルと健康増進および遺伝子解析技術を用いたDNA検査によるライフケアアドバイスの普及に興味を持ち、当協会の趣旨にご賛同いただける個人、法人の方々のご入会をお待ちしています。

特典

日本DNAアドバイザー協会へご入会頂いた方は、協会が配信する様々な特典を受けることができます。

詳しくはこちらをご覧ください。